情報工学実験 履修の手引き

1.学生実験の目的と心構え

実験には、今までに確立された理論を検証する面と、多くの実験事実から法則を見出し新しい理論の体系を打ち立てる面とがある。学生実験では前者の意味合いが強いが、諸君はしっかりと実験結果を見つめ、独創的な理論を打ち立てる気持ちで実験に臨むこと。

学生実験は講義と異なり、数名がグループを作り一つの作業を行う。したがって、各人、自分の分担に責任を持ち、かつ、グループのメンバーと協力し、実験がスムーズに進行するように心がけること。

自分の行った仕事や研究は、報告を行ってはじめて第三者から評価される。どんなに立派な仕事や研究を行っても報告書(レポート)がまずいと評価は得られない。学生実験を通して報告書を作成する技術を学ぶこと。

2.実験に対する諸注意

以下は全ての実験に共通する注意事項であるが、実験テーマによって特別な事項がある場合は担当教員の指示に従うこと。

2.1 まず実験に出席すること

学生実験では、実際に実験装置を操作しデータを取ることが大切であるため、実験への出席を重視する。欠席は単位修得に大きく影響するので注意すること。やむを得ず欠席をしなければいけないときは、事前に担当教員に連絡しておくこと。急病などの場合も友人等を通じて速やかに連絡すること。

2.2 必ず予習をすること

時間内に実験を完了するために、あらかじめテキストを熟読し、実験の目的、原理および実験方法を十分理解しておくこと。入室後は速やかに実験に取りかかること。実験が終わらなくても時間になれば実験を終了するので、時間を有効に使うこと。

2.3 作業は分担し、能率よく行うこと

実験では役割を分担し、全員協力して、作業を進めること。全員が異なった作業を経験できるように、適宜役割を交代すること。また、傍観や実験に関係ない雑談をしないこと。話し合いが必要な場合は他班の迷惑にならないように小さな声で話すこと。実験態度も評価の対象である。

2.4 結線・機具の取り扱いに注意せよ

実験に必要な計器類は、特性、容量、使用条件を考慮し、適当なものを選定し、かつ、正しく結線すること。あらかじめ機具の準備や結線をしている場合は、実験に先立って必ず機具や結線の確認を行うこと。計器類は慎重に取り扱うこと。また、機具の調子が悪いときは、直ちに担当教員に連絡し、そのまま実験を継続しないこと。

2.5 実験はグラフを描きながら行う

値を測定する際にはノートなどに整理して記録すること。また、測定しながら値をグラフにプロットすること。測定値が異常を示したときは実験ミスの可能性があるが、即断してデータを捨てることのないように。異なった測定方法で再度測定するなどして、その原因を探れ。そのような態度がときには新しい発見につながる。

実験に先立って、方眼紙、片対数、両対数グラフ用紙など実験結果を適切に表すことができるグラフ用紙を用意しておくこと。また、実験中にデータを整理するために電卓やノート型PCなどを用意しておくとよい。

2.6 実験が終わったらチェックを受ける

必要なデータを取り終えたら、班全員で結果を検討すること。疑問の点があれば再実験を行うこと。全員での検討が済んだら、実験回路や機具を片づける前に全員で担当教員の所に行き、データのチェックを受けること。担当教員から許可が出ないと実験を終了したとは見なさない。許可が出れば、実験回路の結線を外したり机上の機具を整理したりしてから退出すること。(部屋の掃除当番に当たっている班は、全班の実験終了後、部屋を掃除して退出すること。)

3.レポートに関する注意

3.1 実験者全員が提出すること

特別な指示がない限り実験者全員がレポートを作成し提出すること。

3.2 一週間後に遅れず提出すること

特別な理由を除き、レポートは実験終了後一週間以内に提出すること。提出日に学生実験がある場合は、実験開始前に提出すること。提出場所は担当教員の指示に従うこと。提出期限に遅れたレポートは受理されないこともあるほか、評価が大きく減点される。

3.3 指示に従って書くこと

レポートの形式や内容が不十分である場合は受理されない。報告書表紙の自己チェック項目と本手引きに従って確認した上で提出せよ。指示が守られていないレポートは受け取りを拒否する場合がある。

3.4 再提出・再々提出

レポート提出後、受理されたか否かを各担当の教員に確認すること。受理されなかったときは、不備な点について指導を受け、書き改めた上で再提出すること。また、どの点をどのように修正したかも明記すること。再提出のレポートの提出期限も一週間である。

4.レポートの書き方

報告されない事実は客観的な事実にはなり得ない。

4.1 決められた書式を守ること

用紙 手書きの場合は、本文はA4版横書きレポート用紙(大学名入)を、図はA4版の白紙またはグラフ用紙を用いること。ワープロの場合は白紙に印刷せよ(特に、罫線入り用紙に図を印刷しないこと)。

表紙 手書きの場合は、指定された表紙をコピーして使用せよ。ワープロの場合は、情報工学課程のウェブページから報告書ひな形ファイルを取得すること。表紙には、実験テーマ名、報告者の氏名・学生番号・電子メールアドレス、実験日、報告書提出日、班名、共同実験者名、など必要事項を記入すること。電子メールアドレスは再提出時の連絡に用いるので丁寧な文字で書くこと。連絡が取れない場合は未提出の扱いとなる恐れがある。また、実験テーマ名と班名は担当教員の指示に従って正しく記入せよ。

筆記具 手書きの場合は、黒インクまたはブラックブルーインクのペン、または、黒のボールペンを使用すること。ワープロの場合にも図以外は黒色のみを用いること。グラフなどの図に色を用いる場合は、実線・点線や塗りつぶしパターンなどの区別を併用して、色のみに依存しないようにすることが望ましい。鉛筆書きや色鉛筆の使用は、本文・グラフを問わず原則として禁止する。

ページ 必ず各用紙の右上隅にページ番号を付けること。図表も本文と別ページのときは1ページとして数える。ワープロの場合は読みやすさに十分配慮してフォント・文字の大きさ・余白等を設定すること。

綴じ方 用紙は縦置きで左横をホッチキス等で2箇所以上綴じること。図・表を横長で使用するときは、図・表の上側が綴じ代の部分に来るようにすること。

4.2 正しい日本語を使うこと

レポートの大切な目的は、実験に参加しなかった第三者に諸君が行った実験内容を正確に伝えることである。正確な文章で実験事実を過不足なく正確に伝えること。判読しやすいように丁寧な字で文章を書くこと。一つの文章が二通りの意味に解釈されるような紛らわしい表現を使わないように注意すること。

4.3 必要な項目をもれなく含めること

報告書の本文は、「実験項目」「目的」「理論」「方法」「使用機具」「結果」「吟味・考察」「問題の解答」および「参考文献」からなる。

4.3.1 「理論」および「方法」

実験の基になっている理論と実施した実験方法をレポート1〜2頁程度に簡潔にまとめて記述すること。実験テキストをそのまま写すのではなく、自分が報告する内容にふさわしいものにすること。

4.3.2 「実験器具」

実験結果が客観的であるのは、同じ条件で再実験を行ったとき、いつも同じ結果が得られるからである。また、データに異常があるとき、他の者が再確認のために実験を行うこともある。そのため、どの器具を使用したかということが大切になる。機具の種類だけでなく、個々の機具が特定できるように記録すること。

4.3.3 「結果」

(a) 実験項目ごとに文章に番号と適切な表題を付けること。

 例: 1.1 ○○○法によるシミュレーション

(b) 実験条件、測定条件を忘れずに記述すること。

実験値と、実測値から計算で求めた値とを明確に区別して記載すること。計算値を示す場合は、計算方法や使用した数式を明記すること。

実測値の有効桁数を考えて、計算値の有効桁数を必要以上に取らないこと。

実験結果はできるかぎり図で示すこと。ただし、図で示すことができない場合や、吟味・考察で具体的な数値を用いる場合には表にまとめるのがよい。結果を数値で示す場合は、不必要に有効桁数を多くしないこと。

実験を行ったすべてのデータを「結果」に記載する必要はない。実験の目的に応じて測定データを整理し、自分の報告したい考えに沿ったデータを記載すること。

必要なデータと都合のよいデータは異なる。データが理論値と大きく異なる、あるいは整理に都合が悪い、といった理由でデータを捨ててしまわないこと。

4.3.4 「図・表の書き方」

図は説明図や結果を示すグラフに、表には実験条件や結果の数値などに用いる。図や表には必ず通し番号と適切な題名をつけること。

(a) 一枚のグラフ用紙には一つの図のみを描くこと。一枚のグラフ用紙に複数の図を混在させないこと。また、用紙の上下左右に充分な余白を取ること。特にレポートを綴じたときに記述部分が隠れないようにすること。

(b) 横軸(原因:変数)、縦軸(結果:関数)、目盛りを明確に記入すること。また、各軸に対する物理量(単位)を明記すること。

4.3.5 「吟味・考察」

テキストや参考文献に書いてある事項を写すのではなく、自分の言葉で自分の考えをまとめること。

(a) まず実験結果全体をよく検討し、実験目的に合った結果が得られているかを定性的に検討せよ。

(b) 使用した測定器具の精度を考慮に入れて、理論と測定値がどの程度一致しているかを定量的に検討せよ。

(c) 誤差を考慮しても理論値と測定値が一致しない場合は、実験方法について検討せよ。実験方法が間違っていたと即断するのではなく、どうしてそのような結果が出てきたのかをよく考えること。原因を確認する方法や、その事実を説明できる要因を考え、その要因が正しいかどうかを確認する実験方法を考案せよ。

(d) 大学で学ぶ理論は簡単な原理が主体である。理論には多くの仮定が含まれているため、実際の実験条件とはかけ離れていることがよくある。実験事実が説明できないときには、理論の仮定が実験でも成立しているかを検討せよ。成立していない場合は、実験に対してどのような修正が必要かを考察せよ。また、独創的な仮説を立てて、より広い範囲の条件で成立するような理論を構築することを試みよ。

4.3.6 「問題」

テーマによっては、問題や課題が与えられている。これは実験内容を理解するために設けられたものであるから必ず解答すること。また、各自、実験に関係した問題を見つけ、それに解答することを期待する。

解答は項目別に分けて書くこと。どの問題に対する解答がどれであるか、わかりやすく書くこと。

4.3.7 「参考文献」

他人の文献を引用した場合はそのことを明確に示し、報告書の最後に出典を書くこと。参考文献には通し番号をつけ、著者名、書名、ページ番号、出版社、出版年を、例のように正確に記載すること。

例:
1) 福島雅夫:数理計画入門、pp.100-120、朝倉書店 (1996)
2) 松本崇、堤捨男:電気計測要綱、pp.45-60、学献社(1977)

5.チェックリスト

レポート作成において誤りやすい項目を挙げるので、提出前に各自点検をせよ。問題がなければ表紙の「報告書提出者の自己チェック欄」にチェックをして提出せよ。

実験テーマによって詳細は異なる場合があるが、基本的な考え方は全てのテーマに共通である。担当教員の指示に従い、誰が読んでも(例えば担当教員以外の第三者が読んだ場合にも)読みやすく的確なレポートの書き方を身につけること。

5.1 実験結果は示されているか?

典型的な誤り:実験結果のまとめ方が適切でない

5.2 図表の書き方・まとめ方は適切か?

典型的な誤り:図表の体裁に不備がある

色情報に依存しないグラフ

図 1 色情報に依存しないグラフの例

5.3 考察は十分になされているか?

典型的な誤り:結果に対する考察が不足している

5.4 演習問題はできているか?

典型的な誤り:演習問題の回答が不足している

5.5 レポートとしての体裁は適切か?

典型的な誤り:レポートとしての体裁が整っていない